旭潜水技研

2ndからの振動異音はもしかしてポーポシン現象か・・・?

お客様からこんな相談と改善の依頼がありました・・・。

陸上で2ndステージを咥えて吸ってみると、ブブブ・・・?ビビビ・・・?って感じで、ヒビリ音というか、ビブラート音みたいな音と振動が出るときがある・・・。

2ndからの振動異音はもしかしてポーポシン現象か・・・?


しかし水中で使うと音と振動は消え、特に問題も感じない・・・。

何とかならないか?

というご要望です・・・。

確かにこんな状態、よくありますよね・・・。

正直理由は様々な原因を持っていて、原因は"これ!っ"という絞って限定できる決定付けられるものはないのだが、大枠で言えば結局エアーの流れが、2nd内のどこかで邪魔されてスムースになっていない事による結果だということだけはいえます。

例えばそれが経年劣化による樹脂の変形で、2ndのケースに歪みや隙間が出来て密閉性が失われたことによる場合もあるし、ダイアフラムの抑えが甘かったり、ダイアフラムの材質自体が熱や疲労によって膨張しクリアランスができすぎる場合にも可能性としてはあります。

しかし一般的には、ダイバーが吸い込む要求量と供給される流量のバランスが合っていない、その差が大きければ大きいほどそんな現象が発生します。

水の中では音や振動がなくなるのは、水という媒体に直接2ndステージが触れることで、この振動と異音を伝達して水中に逃がしてくれているから感じなくなっているだけで、実際発生が止まっているわけではないのです。

昔しダイビング業界に入る前、モータースポーツ界にいた頃、ルマン24時間の耐久レースに出場する為のテストで、日産ワークスチームのテストコースに立ち会っていた時、契約しているドライバーが「トップスピードに近づくと車がバラバラになりそうで走ってられない」と、しきりにピットに戻ってきてはメカニックに説明しているのだが、中々その理由が伝わらないし全く分からない・・・。

そこで、「じゃあ一緒に乗ってみてくれ」と、メカニックを半ば強引にシートのないスペースに、消火器をまたがせるように無理やり座らせて、ロールバーにしがみつかせて走り出した・・・。

マシンはグループCカーだから、2人乗れるスペースはなくはないのだが、実際は競技なので単座シートにするので、助手席のようなシートなどあるはずもない・・・。

そんな状態でメカニックは絶叫の時速300kmの世界に無理やり連れて行かれてしまった・・・。

ピットに戻ってきたマシンから足元もおぼつかない状態で転げ落ちてきたメカニックが、「分りました分かりました、ポーポシンですよ・・・」と言った。

聞き慣れない初めての言葉に、ドライバーも「ポーポシンって何?」って聞きなおしてました・・・。

レーシングマシンが高速で走れば走るほどリアウィングで車体上部を流れる風が入るよう受け止めて、マシンが空に浮き上がらないように流体の力で地面にマシンを押し付けているわけです。
これが、いわゆるダウンフォースというものなのですが、この風を受け止めるリアウィングの角度を立てれば立てるだけ抵抗が大きくなり、ダウンフォース効果は高くなる一方、やはり抵抗が大きくなるのでトップスピードが出なくなります。

しかしルマン24時間の舞台となるフランス・サルトサーキットは直線コースが圧倒的に多く、トップスピードがキーワードになる為、逆にウィングをギリギリまで寝かせて空気抵抗を減らしてスピードと燃費を稼ぎたいという狙いはどこのチームにも当然あるわけです。

しかし寝かせすぎれば、マシンはダウンフォース効果を得られず、コーナー速度も遅くなるし、トップスピード付近では飛行機の様にフワッと空に舞い上がり大惨事となるので、そこが微妙なセッティングの見せ所となります。

その時のそれらのセッティングセオリーは誰しもが当然十分承知していたのだろうが、その後すぐ、一つ見落としていた重大なことが判明した。

サスペンションの硬さをトップスピード時にあわせていなかった事が原因で起こったポーポシンだったことがその時わかりました・・・。

要は、トップスピードに近づけば近づくほど、リアウィングに入り込んでくる流量も最大となり、その角度での最も大きなダウンフォース効果が得られます。

しかし、そこで上から下に働くダウンフォースに反発して、下から上に付き返すバランスも同時に作らないとなりません。
この役目も一つのサスペンションの役割です。

しかし、サスペンションの反発力よりもダウンフォースの力のほうが勝ったとき、更に下に車体が押し付けられ沈み込むので、今度はリアウィングの角度の限界を超え、車体が傾斜することでウィング角度が風の流れに対してフラットになってしまい、ウィングの上を風が素通りしてダウンフォース効果が全くなくなってしまいます。

すると車体はダウンフォースの力がなくなった途端、サスペンションのばね力で上に持ち上がろうとします。

そると今度は、車体が持ち上がって傾斜が戻るので、急にリアウィングにまた風が当り出しダウンフォース効果が始まります。

これが永遠と繰り返され、この上下運動によって車体がバラバラになりそうなほどの振動を生み出す原因だったのでした。

これがポーポシンという現象です。

結果的に、リアサスペンションの硬さを調整することで、さっきまでが嘘の様にポーポシン現象はなくなりマシンは安定しました。

今回の改めてのご相談で、そんなずいぶん昔に経験したポーポシン現象というものを思い出しました・・・。

つまり空気の流れと抵抗と、そのバランスを整えてあげればいい・・・。

レギにも十分当てはまる理論だと思いました。

これらの異音振動も、ポーポシン現象と呼べるものなのかもしれません・・・。



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